ï人物紹介
うさちゃん:お母さん・陳昱伶  ちっちゃな兔:お腹にいる小さなbaby  でか牛:お父さん・彭文瑞

結果発表の日になると、正直言って私(でか牛)は少しの期待も抱いていず、あったのは不安だらけでした。以前このように長年うさちゃん(お母さん・陳昱伶)が味わった苦しさを振り返ってみれば、自分は手をこまねいて見ているだけでした。2回の子宮内人工授精失敗という試練を受け、私は認めざるを得ません。私は自分が考えるほど強くないことを。私はまた失敗を恐れていました。結果発表日はまだ来ないのに、うさちゃんはもう妊娠検査薬を抜き出すのを待ちきれず、おどおどしながら自分で先に結果発表をしたのです。私はうさちゃんの緊張した姿を目にして、私は胸が痛み、そして怖くなりました。私はいつもまずうさちゃんに予防注射を打ってもらい、「早めに検査すると検査がダメになるぞ。損得ばかりを考えすぎないようにね」と言うようにしました。
この数年でどれだけ妊娠検査薬を使い果たしたことでしょう。以前はずっと妊娠検査薬が不正確ならいいと思っていました。ですが今回は、私は正確に結果を出して欲しいと思いました。喜ぶ気持ちは出てきませんでした。あるのは不安だけだったのです。その日から、うさちゃんは毎日結果発表を行い、その棒もこれに合わせるように一日また一日とはっきり現れてきました。ジャングルを走っていたちっちゃな兔(お腹にいる小さなbaby)がついにやって来たのです。うさちゃんの嬉しそうな様子を目にして、私は自信がなくなり喜ぼうという気持ちが少しも起こりませんでした。続いて採血検査の時になると、指数が高く、双子ではないかと思えるほどでした。私のもつれ合った心の糸がようやく少しばかりほどけ始めたのです。
うさちゃんはやはり毎日1本妊娠検査薬を使います。私が「なんでまた検査なんだ」と聞くと、うさちゃんは、「あの子が逃げ出すんじゃないかって心配なの」と言いました。私は振り返って目頭が熱くなりました。あっという間に17週目になった今、ここまで書くと私は目に溢れる涙を抑えきれませんでした。ついに移植後初めての再診日になりました。お医者さんSは「この赤ちゃんは鼓動が汽車みたいに力強いですね」とおっしゃり、気が弱い私もようやく胸いっぱい笑いました。その時、私が思い浮かんだのは嬉しそうなうさちゃんでした。そして次の瞬間、ようやく汽車のようなちっちゃな兔になったのです。私という36歳のうさちゃんに0歳のちっちゃな兔が加わって、この2人の物語が本格的に始まったのです。
もちろんここで話したいのは、うさちゃんとちっちゃな兔の物語ではありません。中国医薬学院生殖医学センターの張先生、そして人一倍気遣いができる天使達への、私達からの感謝の気持ちです。限られた文章でできるだけ皆様に体験談をお話しすることなのです。私は今回特別に天使達のお名前を書き写しました。ですがバカな私は、感謝を表すために書いたこの文章でもこのようにだらだら書きつらね、天使達のお名前もどこに置き忘れてしまったのか分かりません。天使達が許してくれればと思います。
結婚して8年、うさちゃんと私の物語は全然特別なものではありません。最初の頃は自然体でいました。それから徐々に心配と不安がやって来ました。続いて他人の成功例を見習って、神農が命がけでいろいろな薬草を試した伝説に習って薬を飲み、モルモットのように漢方・西洋医学が合わさった医療を試しました。そして最終的にはこの宝島・台湾各地の廟に赴き、神靈と心からの交わりをするということになりました。正直申し上げて、国外に行っても、機会さえあればやはり同じような祈願をしたことでしょう。ある亥年(訳注:中国語では「豚年」の時のことをまだ覚えています。うさちゃんが豚の男の子や女の子を産みたかったのですが、小豚達はやって来なかったのです。丑年になると、うさちゃんはちっちゃな牛を産んで、ちっちゃな牛がでか牛と同じようにこ憎たらしいのか見てみたかったのです。でもちっちゃな牛はやはりやって来ませんでした。うさちゃんの心は深く傷つき、体も持たなくなりました。私達にはちっちゃな赤ちゃんを産もうという気持ちが完全に失せてしまったのです。
同僚が試験管内受精に成功し、それに元気付けられたことがあります。その人は、「まだ赤ちゃんを産みたいって気持ちがあるなら、早いうちがいいわ。年を取るほど成功率は下がるからね」と話してくれました。私達は勇気を奮い起こして商売っ気のない張先生に会いに行きました。人間としての尊厳が保てればと思いました。というのも実は、人工生殖をするお母さん達は身心共に試練を受けているので、普通の人よりも人間味のある温もりと接し方が必要になっています。単に胎芽が着床する場所ではないのです。初めて張先生にお会いした時、先生の自負心とストレートな語り口にあまり馴染めませんでした。ですがその後、先生は自分の専門分野に自信があるのであり、自惚れではないこと、話がストレートなのは、直接ただ事実をありのままに言っているだけで、過度の期待を持たせないからだと分かりました。
今、うさちゃんは白くぷくぷく太り、ジャングルを走り回る大きな白兎に変わりました。汽車のようなちっちゃな兔は素直に私に合わせてくれ、うさちゃんにあまり不愉快な思いをさせません。ちっちゃな兔はうさちゃんにはいい態度です。これからは私も可愛いがってあげなきゃなと思いました。
張先生と美しい天使達が、私の赤ちゃんであるうさちゃんに専門的で心温まる扱いをしてくれたことに感謝いたします。皆様お疲れ様でした。ちゃんとした食事も、きちんとした休假も取れなかったのに。私達のこの幸せいっぱいの喜びが、辛い仕事を重ねた皆様に多少でも慰めになることを望みます。